筋肉を動かすと脳は覚醒する ! 高齢の人によく見られる老化現象の一つに、覚醒時と睡眠時との境があいまいになる現象があげられます。
つまり、昼間でもすぐ眠たくなる反面、夜中に目が覚めやすくなるというものです。 これは、筋肉の衰えと無関係では ありません。 筋肉が脳の覚醒と関係があることは、すでによく知られた事実です。
たとえば、脳がまだ寝ていたいのに起きなければいけないようなとき、脳は筋肉から覚醒信号を出させるため、口を 大きく開けるよう指示します。 その結果、舌骨下筋があごを下へ引っ張ると同時に、こう筋があごを閉じるように働き
両者の間で綱引きが行われます。 そのさい、筋肉内にインパルス(神経衝撃)が生じて脳を覚醒させるのです。 脳の中で睡眠をつかさどるのは、脳幹網様体附活系と呼ばれる中枢です。 この中枢を刺激するのは通常、光や音、不規則な振動などです。
しかし、立ったまま、あるいは物を持ち上げたまま寝ることが出来ないことからも分かるように、筋肉の働きも脳に対する有力な覚醒刺激となるのです。 一方、これとは逆に筋肉が弛緩すると、覚醒信号が発生しなくなり、睡眠状態へ入りやすくなります。
昼間よく運動した日は、夜中に熟睡できることは多くの人が経験しています。 また、いつもはテレビや明かりがついていると眠れない人でも、体が疲れているとソファーにくつろいだだけで眠たくなることは、誰もが経験しているはずです。
これらは筋肉が回復を図ろうとして弛緩し、脳幹網様体附活系へ刺激が伝わらなくなるために生じる睡眠現象といえます。 では、どんな筋肉でも睡眠中枢に影響力を持つかというと、そうではありません。 筋肉は大別して、速筋繊維
と遅筋繊維の二種類に分かれます。 前者は、収縮速度が速くて大きな力を出すのに適していますが、疲れやすいという性質を持っています。 いわば、短距離選手向きの筋肉といえます。 そして、これらの筋肉はお互いの性質だけでなく、脳の中での命令系統も異なっています。
一般に、腕や手などに多い速筋繊維は、意識により働く随意的な筋肉で、大脳皮質の命令で動くことが知られています。 一方、背中や腰・臀部太もも・ふくらはぎなど、体の姿勢を支える部分に多い遅筋繊維は、意識しなくても動く
(言い換えれば反射的に動く)筋肉で、主に、脳幹や小脳・脊髄などの命令で動くといわれています。 睡眠をつかさどる 脳幹網様体附活系は、脳幹の中枢に入るので、遅筋繊維と密接な関係にあるのです。
ボケ防止に役立つ爪先立ち
ところで、筋肉は年齢と共に、走ったり物を持ち上げたりするための速筋繊維から減少を始めます。 こうした筋繊維は運動には必要ですが、脳幹の働きにはそれほど影響しません。 しかし姿勢を支える筋肉である
遅筋繊維が減少すると、覚醒信号が発生しにくくなり、昼間でも眠たくなったり、仕事中にボーッとするようになります。 このような現象は正確にはまだボケとはいえないものの、それに近い状態であることは確かです。
ボケには、脳内の血管障害やある種の老化物質が関係していることは良く知られています。 しかし、家の中に閉じこもってほとんど他人と会おうとしない人や、寝たきりの人にボケが多くあらわれていること、また、それまで元気だった人が、足を骨折して入院したとたんにボケるケースが多いことなどを考えると、遅筋繊維の衰えも少なからぬ影響を与えているものと思われます。
体力や健康の維持を目的とするならば、もちろん速筋繊維も含めて全身的に鍛えることを第一に考えるべきです。 ただし、これは若い人に言えることで、ボケ予防のためとなると、事情は異なります。
中高年の人には、重いものを持ち上げたり、速く走ったりするための筋肉は、あまり必要ありません。 むしろ、力は弱いが疲れにく脳幹との関係の深い遅筋繊維を鍛えるためには、まず歩くことが大切です。 その意味で、最近中高年で山登りをする人が増えていますが、大いに歓迎すべき傾向と言えるでしょう。
しかし、誰でもが山登りを出来る環境にあるわけではありません。 世の中には、時間的あるいは肉体的な制約があって、とても山登りは出来ないという人も少なくないからです。 そんな人に勧めたいのが、 「爪先立ち」 です。
爪先立ちは、体の姿勢を支える筋肉を効果的に鍛えられる上に、年を取ると衰えがちになる体のバランス感覚を養う うえでも大きな効果を発揮します。 また、家の中でも手軽に出来るうえに、体の弱った人でも無理なく安心して行えるという利点もあります。 その意味で、ボケ予防のみならず健康維持のうえでも、優れた方法の一つと言えます。
方法は。まず三十秒、爪先で立ちます。 次に三十秒かかとを付けて休みます。 これを一セットとして五セット、合計五分間行ってください。 回数は、一日二回程度です。 朝と寝る前に行うといいでしょう。
なお、この爪先立ちは二、三週間行っているとだんだん物足りない印象を受けるようになります。 その場合は次の 段階として、体を壁などで軽く支えつつ、膝をくの字に曲げて爪目先立ちを行うようにしてください。
ただし、膝をいきなり大きく曲げすぎると、関節を傷める原因となります。 初めは曲がっているか曲がっていないか 分からない程度から行い、慣れるにしたがって徐々に深くしていくといいでしょう。 最終的には百二十度くらいを目標にしてください。
社会的に重要な地位にある人の中には、八十歳になっても体がシャンとしている人をよく見かけます。 これは、頭を使うからというよりも、絶えず外出したり、人と接触するなどして体を使っていることが頭の働きまでよくしていると考えたほうが、的を得ているように思います。
反対に、一日中家の中に閉じこもったり、人と合わなかったりする人は、筋肉を使う機会が少なく、そのことが頭まで 老化させることもあるのです。 ボケの原因については、現在のところまだ不明な部分が多く残されています。
しかし、少なくとも筋肉に関しては、よく動かす人がボケにくい事がわかっているわけですから、爪先立ちで日々少しずつ鍛えるようにしてください。
初恋ダイエットスリッパを使って爪先立ち歩き(つま先立ち歩き)を行ってください。 |