医師の立場から、アトピー性皮膚炎の治療原則は、本性を治癒するのが困難であるため、症状を抑えることと考える。
アトピー性皮膚炎は主として乳幼児に多く、近年その患者数が増加の一途をたどっている。いろいろな治療法が専門医により試みられ、テレビ、新聞などで紹介されることも多いが、施設が限られているため、容易に治療を受けられない場合が多い。
一方、温泉が多種の皮膚病に効果があることは昔から知られているので、家庭で温泉欲を行い、アトピーの治療の効果を期待できると考えた。 著者は、辻子谷龍泉株式会社と、重症のアトピー性皮膚炎の乳幼児患者の協力を得て、その効果を調べた。まず、患者がアトピー性皮膚炎であるかどうかは、日本皮膚科学界の「アトピー性皮膚炎の診断基準」に照らして判断した。
診断基準を満たす乳幼児の5名に、「延寿湯温泉」を規定の使用方法に従い、試みた。 五例のうち4例については、二週間以内に著効を示し、特徴的な乾燥皮膚が改善し、そう痒と掻爬による傷が消失した。
他の一例は一週間目に皮膚の発赤が認められたが、中止するまでには至らず、継続して使用を依頼。やはり二週間目には効果を現し、他の四例と同様に著効を示した。 重傷アトピー性皮膚炎の治療はこれまで、副作用の心配されるステロイド軟膏に頼らざるを得ず、また、重要な合併症として伝染性軟属種(水いぼ)、伝染性膿化痂疹(とびひ)があり、その治療に苦慮した母親も多いと思われる。
生薬を成分とした「延寿湯温泉」による温泉浴は、自宅で行える治療法として、今後さらに注目されるべきであると考える。
アトピー性皮膚炎の診断基準
| 1 |
そう痒 | | |
2 | 特徴的皮疹と分布 |
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(1)皮疹と湿しん病変 | |
■急性病変 | 紅斑、湿潤性紅斑、丘疹、漿液性丘疹、鱗屑、痂皮 |
| ■慢性病変 |
湿潤性紅斑、苔癬化病変、痒疹、鱗屑、痂皮 | |
(2)分布 | | |
■左右対側性 | 好発部位:前額、目囲、口囲、口唇、耳介周囲、頸部、四肢関節部、体幹 |
| ■参考となる年齢よる特徴 |
| 乳 児 期: |
頭、顔に始まりしばしば体幹、四肢に下降 | |
幼 少 児 期: | 頸部、四肢屈折部の病変 |
| 思春期、成人期: |
上半身(顔、額、胸。背)に皮疹が強い傾向 | |
3 | 慢性・反復性の経過(しばしば新旧の皮疹が混在する):
乳児では二カ月以上、その他では六カ月以上を慢性とする。 | | #上記1.2および3の項目を満たすものを、症状の軽重を問わず、アトピー性皮膚炎と診断する。その他は急性あるいは慢性の湿しんとし、経過を参考にして診断する。 |
(日本皮膚科学会「診断基準」より ) |
【参考資料:アトピー】